ヴィオラ日記5

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オペラ伴奏オーケストラでの体験

 初めて経験したオペラの伴奏オーケストラでの練習は、普通のオーケストラとはかなり趣が異なりました。


 まずはパート譜の長さです。今回のヴェルディ作曲イル・トロヴァトーレのヴィオラパート譜は66ページあり、演奏時間は2時間を超えます。この前に経験したブラームスの大曲ドイツ・レクイエムの演奏時間は約1時間15分で、ヴィオラパート譜は15ページなのと比較するとその長さがわかると思います。

 次に楽譜の一部変更がかなり頻繁に行われることがあります。オーケストラでの交響曲等の演奏では楽譜の版の違いがある場合以外はあまり経験しませんでした。曲の一部カットは数小節の部分から1ページ弱に及ぶ箇所まで、多数あります。さらに一部の歌の移調があります。オペラ以外の歌曲等にも、いくつもの音域に移調した譜面が存在しています。このような比較的自由に曲に手を加えることは、現代のポップスの世界のみならず、クラシック音楽始まりの頃のバロック音楽時代等にも結構行われていたようですが、歌の世界では今でも普通のようでした。

 そしてその音楽のもっとも特徴的なことは、歌が入る部分で、歌に合わせてテンポが自由に延び縮みすることです。もちろん作曲者や過去の演奏家達の積み重ねに今日の解釈も加えてのことなのでしょうが、そのテンポの変化(テンポ・ルバート)の多さは、交響曲などのオーケストラ曲では経験の無いものでした。楽譜とは何と不完全な記号なのでしょう!

 もう一つ、音楽とは別の事ですが、オーケストラは暗い中で譜面灯をたよりに譜面を覗き込みながら演奏することになります。これも今回初めての経験でした。暗い中、コンサートマスターの動きは余り見えず、ライトアップされた指揮者だけは見えます。弦楽器は普通、この暗がりで二人で1つの譜面台を見るのですが、私は頼んで一人1台にして頂きました。

 

 これらから、オペラのオーケストラ演奏は体力だけでなく、集中力の持続が要求される難しい要素もありますが、なにより歌との合わせ稽古が始まると、歌に寄り添って共演することの快感は他では得難い経験となりました。一方その全曲演奏はこの老体には結構きつく、今後続けていけるかは、しばらく思案中です。


宗教曲と、オペラと、室内楽と、どれが最も魅力的でしょうか?