ヴィオラ日記7

古着・古布の回収から見えた事

古着回収町会

今回は音楽から離れた話題を取り上げます。 

 

 町内会で年2回古着・古布の回収を行っています。東京都世田谷区内各地域に「ごみ減量・リサイクル推進委員会」という組織がつくられ、その主な活動の一つが古着・古布回収となっています。具体的活動は9町会ほどの地域がまとまった一つの地区を単位に、同じ日程で行われますが、区内の他の地域はそれぞれの日程にて活動しています。 具体的には地区内に6か所の回収場所を設定し、休日の午前中いっぱい、各家庭から持参して頂いた古着・古布を回収し、更に回収場所によっては車やリヤカーなどで地区を回って回収しています。

その回収量は結構驚きの実績で、9町会で約20トン前後集まります。毎年2回実施していてもほぼこのくらいの回収量となるということは、それだけの量の衣類等を購入しているのでしょう。

 

 その集めた古着・古布はどうしているのでしょうか。地区により異なるかもしれませんが、私の住む地区では、回収業者が買い取ってくれて工場に集められます。そこでこの古着等は中古衣料として再利用できるもの、自動車の断熱材やフェルトなどに加工して再利用されるもの、工業用のウエス(雑巾)として利用されるもの等に選別されます。中古衣料はアジア各国に送られます。日本の中古衣料は品質が高く広くリサイクルされているそうです。

 これらの古着等は回収されなければ、一般の可燃ごみとして排出されるはずです。この一般のごみ処理には、焼却費なども含めて1トン処理するのに約5万円以上のコストがかかります。20トンの古着等が回収されて、ごみとして排出されないことにより、9町会で20×5万円=約100万円の税金の節約になっています。そのうえ焼却排ガスや焼却灰なども少しですが削減されているのです。

 

古着等の回収でこれだけの効果があるのですから、その他の一般のごみの中にも資源として利用できるものを分別回収できれば更に環境負荷の削減と税金の節約ができるはずです。当面は紙類の回収を増やして資源として再利用しようとしていますが、まだまだ可燃ごみとして排出されています。

 平成30年度に東京都の清掃工場に搬入されたごみの中身の内、最も多いのが紙類で全体の40%以上を占めていて、紙類の資源としての回収はまだまだ増やすことができるはずなのです。

 

段ボール

 このごみ減量・リサイクル推進委員会の活動の一つに各種ごみ処理施設の見学がありますが、昨年は東京都の埋立地と併設されている不燃ごみ処理センターの見学に行きました。古着・古布の回収から視野が広がり、さらには一般のごみが最終的にどのように処理処分されているのかを見ることができました。ごみには一般廃棄物と産業廃棄物がありますが、ここで処理しているのは23区内で発生する一般廃棄物の焼却処理残渣や下水汚泥などの都市施設廃棄物、都内の中小企業が排出する産業廃棄物を埋め立て処分しています。

ごみの収集量は太平洋戦争以前は数十万トンでしたが、戦後は高度経済成長期とともにその量は急拡大し、現在(平成30年度)は昭和最後期のピーク時期490万トンに比較し約44%減の年間約275万トンが発生しています。

 

 この275万トンの発生ごみ量は焼却や破砕等の処理をしたのち約30万トンの残渣として埋立処分されています。23区には清掃工場といわれる焼却炉は21施設(うち2施設は建て替え中)が設置されており、更に不燃ごみ処理センターが2施設、粗大ごみ破砕処理施設が2施設、灰溶融施設が1施設、し尿の下水道投入施設が1施設あります。

焼却炉で残った焼却灰のうち約3万トン(平成30年度)はセメント原料として有効利用されており、また発生する熱エネルギーにより電気や高温水として施設内利用や売却等を行っています。売却した電気量は約25万世帯分(平成30年度)の使用量にあたります。

 不燃ごみは細かく破砕し、鉄分やアルミニウムを回収しており、粗大ごみは可燃系と不燃系に選別した後破砕し、鉄分の回収した後、焼却または埋め立て処分します。

これらの回収物を金額で示すと、売電収入額は約106億円、売熱収入額は約1.4億円、鉄売却収入は約2.2億円、アルミニウム売却収入は約1.1億円と大きな額となっています。

また焼却灰からは希少金属を含むメタルを209トン回収し売却収入は約1億円となっています。

 

 さて以上に示したごみの処分先は東京港港湾区域内にある埋立地内にて埋め立てられており、現在使用されている中央防波堤外側埋め立て処分場[その2](199ha)と新海面処分場[廃棄物系](319ha)は23区の最後の埋め立て処分場となります。過去には8号地(江東区潮見:36.4ha)で371万トン、14号地(江東区夢の島:45ha)で1034万トン、15号地(江東区若洲:71.2ha)で1844万トン、中央防波堤内側埋立地(78ha)で1230万トン、羽田沖(大田区羽田空港:12.4ha)で168万トンの埋立が終了しています。これらの埋立処分場ではごみを搬入後、飛散・悪臭防止のため1日毎に土で覆います。これの上に更に覆土し、その上に更に廃棄物を埋め立てていくサンドイッチ工法などで処分されています。この埋立地に降った雨は排出しなければ溢れてしまいます。しかし雨水はごみの層に浸み込み汚れますので、海には流せません。この汚れた雨水を浸出水といい、排水処理場を設けて処理したのち下水道に放流しています。  

 

 

 今使用している埋立処分場が満杯になったのちの処分場は決まっていません。平成30年度の埋立処分量は平成元年度のピーク時に比較し87%減の約30万トンにまで減少してきています。今後は発生するごみ量を更に減少させ、埋め立て処分量を抑えながら、今の埋立処分場が長く使えるように、生活の工夫や処理技術の改善を続けていく必要があります。

 

 

 以上のごみ処理処分の内容は以下の資料から引用しました。

※「ごみれぽ23、2020 循環型社会の形成に向けて」; 編集発行 東京二十三区清掃一部事務組合